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ヴァーチャルツアーの営業を振り返る - その1 -

2011
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 本サイトでは初めてブログを投稿することになりました、カディンチェ株式会社代表取締役の青木崇行です。

 「ブログをはじめる」にあたって、どんな記事を書こうか少し悩みましたが、まずはカディンチェ株式会社がこの2年あまり積極的に取り組んできた、「ヴァーチャルツアー」について書いてみようと思い立ちました。本稿から3回程に渡り(たぶん)、ヴァーチャル・ツアーの営業活動で感じた事や、私たちが営業を挑んだ業界についての考察など、思い付くままに書いてみようかと思います。

ヴァーチャルツアーについての詳細は、こちらのページをご参照下さい。

 記念すべき第一回目の今日は、「ヴァーチャルツアー」の有力市場として私たちが見込んだ業界、特に「不動産業界」についてです。弊社では、大手不動産ポータルサイトを運営する会社様はもちろんのこと、公的機関の位置付けに近いREINS(不動産流通標準情報システム)の関係者様、デベロッパー様から街の不動産屋さんに至るまで、不動産業界に関わる様々な方々へ営業・ヒアリングを行いました。このような活動を通じて私たちが得た知見を共有させて頂きたいと思います。
 
 弊社では、室内空間3次元モデリングやパノラマ写真を用いたヴァーチャルツアー制作サービスを始めるにあたり、不動産業界、ホテル、文化遺産施設などを想定顧客として考えていました。室内空間を「商品」として提供している企業様に対してヴァーチャルツアー導入をご提案し、ウェブサイト上に掲載して頂くというのが狙いです。

 これは私たち自身が引越しのために不動産物件を探した時の実体験に基づいています。現在インターネット上に掲載されている物件の情報量だけではまだ不足しており、内見せずにもっと効率的にウェブ上で候補物件の絞り込みができないものかと感じたのです。また、このような問題意識に加え、不動産業界は取り扱う物件数が非常に多く、関連業者も多数存在していることから有望な市場ではないかと考えました。

 では、実際に約2年間に渡って不動産業界向けに営業をしてみてどうだったのか。結論から言うと、ヴァーチャルツアーを含むマルチメディアコンテンツの導入は簡単ではないということが分かりました。

1. コスト(広告宣伝費)

 賃貸物件では、不動産業者の売上は賃貸契約時の手数料(通常賃料の1-2ヶ月分)が主になっています。そしてこの手数料から人件費を始めとする固定費を賄うことになるために、物件1つあたりの広告宣伝に掛けられる予算はは数百円からせいぜい数千円程度になっています(物件の賃料にに応じて価格は変わります)。従って、営業担当者が物件に赴き、その風景をデジカメで撮影してウェブサイトにアップロードしたり、対面営業の際に印刷するのがやっとで、手の込んだ動画やヴァーチャルツアーにまでかける予算的・時間的な余裕がなかなかありません。

3. 撮影者・撮影時期

 通常の静止画像なら営業担当者でも撮影できますが、全方位画像や3D計測といった特殊な撮影は機材やスタッフという面である程度の技術力が必要になります。また、賃貸物件では借り手が決まった場合にはその物件のコンテンツは不要になり(再度必要になるのは物件が空いた時)、コンテンツの再利用性が低くなってします。まとめると、ヴァーチャルツアーなどの撮影は外部業者に委託せざるを得ないが、その撮影時期は必ずしも定期的ではなく、コンテンツの入れ替えが激しいというのが賃貸物件の特徴になります。

3. 現場主義

 部屋の特徴や街の雰囲気は現地に行ったほうが直感的に分かるというのは当然のことですが、お客様が不動産業者を訪問し、直接話をするというのは、それだけ営業トークのチャンスができ、その対話の中で強く契約を勧められるという利点があります。インターネット上のコンテンツだけで判断されては、そのような営業トークの出番がなくなるために、場合によっては潜在的な顧客を失ってしまうという危機感もあるようです。

確かに大手ポータルサイトなどでは、一部の賃貸物件にパノラマ写真が掲載されているものもあります。しかし、それも全掲載物件数の約5%程度に過ぎません。お客様視点では明らかに利便性の高いコンテンツであるにも関わらず、爆発的な普及に至っていないのは、上記のような背景があるからだと考えられます。

弊社では3次元モデリング技術の制作コストの低減化を図るとともに、パノラマ写真を用いた廉価版ヴァーチャルツアーに関しても付加価値をつけることで、今後も不動産業界ウェブサイトの3D化・パノラマ化に挑戦し続けたいと考えております。

さて、今回はヴァーチャルツアーの普及にまつわる課題面を中心に書いてみました。次回の記事では、逆にヴァーチャルツアーを積極的にご提案したい業界や業種、その理由や考察などを書いてみたいと思います。

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