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バーチャルリアリティ2015

2015
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カディンチェが取り組んでいる事業をこれまで僕らは空間表現技術やパノラマなどと呼んできました。そんなパノラマ静止画・パノラマ動画というある意味ニッチな業界にいたつもりが、最近はバーチャルリアリティ(VR: Virtual Reality)という波が来ていて、そんな波に乗りながらパノラマVR・スマホVRのサービス提供や技術開発に取り組んでいます。そこで改めて当社が取り組んでいる事業をバーチャルリアリティの歴史的な背景と照らし合わすことで、今何に取り組んでいて、どこに向かっているのかを整理してみたいと思います。

視覚系バーチャルリアリティ

Oculus Riftに代表される没入型ヘッドマウントディスプレイの登場や、そのOculus VR社がFacebookに約2000億円で買収されたぐらいから、バーチャルリアリティという言葉が(再び)メディアを賑わすようになってきました。まるでそれがとても新しい技術のように紹介されているのをよく見ますが、バーチャルリアリティ研究自体は1968年前後から進められていました。視覚以外に聴覚や触覚などをコンピュータ上で再現させるのもバーチャルリアリティと呼ばれますが、ここでは主に視覚系に絞って話を進めます。Wikipediaによると「1968年にユタ大学のアイバン・サザランドによって HMD(ヘッドマウントディスプレイ、頭部搭載型ディスプレイ)が提案されたものが最初のバーチャルリアリティであるとされ」ているそうです。このアイバン・サザランドさんが開発されたHMDを見ると、現代のHMDの原型は今から約50年前にすでに出来ていたことがわかります。

いまではVR専用ハードウェアとしてのHMDだけでなく、Google Cardboardやハコスコといったスマートフォンを用いて安く簡易にVRを体験させられるスマホVRが出てきています。当社では主に視覚系バーチャルリアリティの分野で事業展開をしています。

VRコンテンツの拡充・可能性検討

HMDで視聴する映像コンテンツは、視聴者の頭の動きに応じて映像も変わるようにするために、多くの場合3D仮想空間やパノラマ360度動画になってます。コンピュータグラフィックスで作られた空間は3Dメタバースと呼ばれ、2003年に開始されたセカンドライフなどが代表例としてあります。さらに遡って1991年にトーマス・ディファンティやダニエル・サンディンらの複数方向の壁面をディスプレイにした没入型空間CAVEなどでも仮想空間の再現をしています。

VRのハードウェアだけ揃っても視聴すべきコンテンツがなければ楽しめません。そこで当社では実写型パノラマ動画の撮影・制作を通してVRコンテンツを増やしたり、パノラマ動画共有サイトであるPanoPlaza Movieを運用することで、より多くのVRコンテンツが世の中に出回るような支援をしています。弊社のお客様のハコスコストアさんにもコンテンツは充実しています。こういった活動を通して、バーチャルリアリティで有用もしくは面白いコンテンツを探っています。スポーツコンテンツの撮影を通して、VRは没入感を体験させられるだけでなく、アスリートの一人称全周囲視点などを体験させられることを発見しました。今後もスポーツだけでなく、観光、音楽、工場見学、交通機関等の実写系コンテンツを制作しながら、可能性を拡大していきたいと思っています。

非平面コンテンツでの技術開発

テレビ放送が1940年前後に始まって以来、視聴者は解像度や色などに進化はあったものの、基本的には平面なコンテンツを見てきました。インターネット上の動画コンテンツも放送フォーマットやテレビ機器という制約がなくなったにも関わらず、これまでは画角の決まった平面コンテンツでした。しかし、バーチャルリアリティでのコンテンツでは360度全方位の非平面コンテンツになり、映像コンテンツのフォーマットが一気に変わる変革期となっています。ここでは視聴者が見たい方向を自由に見られ、インタラクティブなユーザ体験を与えられるようになりました。

これまでのテレビ放送とネットでのバーチャルリアリティコンテンツとの違いは以下のようになります。
・平面/固定画角コンテンツ→非平面/全方位コンテンツ
・リモコン操作→マウス操作・ジェスチャー操作
・放送/テレビ機器→ネット/ネット対応端末
このようにこれまでのテレビなどでは与えられない映像体験を提供しているのがバーチャルリアリティだと捉えています。その高画質化には撮影・編集・配信のすべての過程での検討が必要になります。また既存の制作現場にあるノウハウの多くは平面コンテンツに特化しており、パノラマ動画などの非平面コンテンツでやるべきことはたくさんあります。

まとめ

バーチャルリアリティはいよいよ一般消費者に利用いただける技術レベル・価格になってきました。今後はバーチャルリアリティ関連の技術開発とともに、どのようなコンテンツをどのような視聴者に向けて届けるかといった、よりユーザ目線での取り組みが必要になります。当社としてもまずはパノラマ動画をベースにした、制作・配信・表示の各工程での技術開発に取り組んでいますが、様々なコンテンツをより臨場感高く・より感動を共有しやすいような方法で提供できるように努力する所存です。

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