RESEARCH

Beyond5G機能実現型プログラム

概要

都市のサステイナブルかつレジリエントな発展の「未来像」に着目し、多様な人々が仮想空間内に作成/編集/共有する「未来像」を起点としてバックキャスト指向で動作する未来都市情報基盤を構築し、特に環境と防災の面で神奈川県南部湘南地域において広域実証を行います。
都市Cyber Physicalシステムのオーケストレーションによって、Beyond 5Gネットワークを有効に活用してCyberとPhysicalを連携させるとともに異種システム間を協調的に動作させ、人の行動変容に資する超解像度情報をリアルタイムかつ適応的に生成、配信、提示する基盤技術を創出します。

Beyond5G image

プロジェクト研究概要

プロジェクト名

Beyond 5G研究開発促進事業 (採択番号05401 (機能実現型プログラム 一般課題))

研究課題名

ShonanFutureVerse:仮想都市未来像にもとづく超解像度バックキャスティングCPS基盤

研究期間

2022~2023年度の1.5年間

研究体制

東日本電信電話株式会社(代表提案者)、学校法人慶應義塾、国立大学法人京都大学、国立大学法人東京大学、株式会社アイ・トランスポート・ラボ、カディンチェ株式会社、株式会社ゼンリンデータコム
https://future-ver.se/members/

研究開発項目と担当

研究開発項目 1
未来都市の創造
研究開発項目 1.1)
仮想未来都市創造技術(カディンチェ株式会社)
研究開発項目 1.2)
超解像度仮想未来都市データ解析(東京大学)
研究開発項目 1.3)
超解像度仮想未来都市データ生成(株式会社アイ・トランスポート・ラボ)
研究開発項目 2
バックキャスティング指向サイバーフィジカルシステム
研究開発項目 2.1)
バックキャスティング(学校法人慶應義塾)
研究開発項目 2.2)
サイバーフィジカルループ(京都大学)
研究開発項目 3
現在都市の未来化
研究開発項目 3.1)
超解像度オーケストレイテッド・都市センシング(学校法人慶應義塾)
研究開発項目 3.2)
行動変容のための情報生成・配信(ゼンリンデータコム)
研究開発項目 4
ShonanFutureVerse の創造
研究開発項目 4.1)
平時の実証(NTT 東日本)
研究開発項目 4.2)
有事の実証(NTT 東日本)(京都大学)

Research topics

1. 2022年度 研究開発成果・今後の研究開発計画

1. 研究開発成果

初年度である2022年度は、各研究開発項目ごとの要素技術を用いた基本設計およびデータ収集基盤検討を推進するとともに連携のための基本検討を推進した。仮想都市を実現するための現在都市データの整理および収集、VRアプリ開発、シミュレーション基盤の構築を開始した。

研究開発項目 1 未来都市の創造
①未来都市の創造
研究開発項目 1.1) 仮想未来都市創造技術 (カディンチェ株式会社)
  • アイトラッキングや物体検出技術を用いた感情推定システムを開発
  • 横須賀市の3Dモデルデータ制作とサンプルVRアプリを開発
  • LEDディスプレイをビジュアリゼーション試用

都市に滞在する人が AR 型装置として装着すると、その人が見とれてしまうような街の「魅力オブジェクト」が自動的に検出されそれらが視界内でリアルタイムに増減・加工表示されることで、即座に未来状態である『キラバース』『ヤバース』を体験できる未来都市像抽出装置「キラキライザー」の研究に先駆けて、感情推定、視線検知、視界内の物体検出等の仕組みを研究開発した。
また、仮想未来都市を 3D 仮想空間として体験できる「FutureVerse」の研究に先駆けて、ShonanFutureVerse が対象とする地域の 3D 都市モデルの制作や編集を行い、VR ヘッドマウントディスプレイや LED ディスプレイでの表示実験を行った。

研究開発項目 1.2) 超解像度仮想未来都市データ解析 (東京大学)
  • 高解像度の携帯電話人口統計データを継続的に取得する体制を構築
  • Twitterデータを用いてトラフィック予測の実証対象とする地区を選定

都市スケールでのトラフィック予測モデルを構築する基礎技術の開発を行った。
まず、ソーシャルメディア情報および携帯端末の位置情報に基づく人流統計データ等を用い、スポーツやコンサート等のイベントによる会場の人口変動が、周辺地区や接続する交通路線に与える影響を分析することで、予測のための基礎データを得た。分析結果に基づき、関東圏内のモデル地域において予備実験を実施し、イベント発生に起因する広域の人口変動の基礎予測モデルを開発した。

研究開発項目 1.3) 超解像度仮想未来都市データ生成 (株式会社アイ・トランスポート・ラボ)
  • 神奈川県南部地域の交通環境デジタルツイン構築に必要な官民データを収集
  • 利用可能なモビリティ関連データを有償で継続的に取得する体制を構築
  • 湘南地域マルチモーダル交通シミュレーションのプロトタイプを構築

湘南地域を対象に、交通環境デジタルツインの構築に必要な官民データを収集し、現状で利用可能なモビリティ関連データを継続的に取得する仕組みと、湘南地域における交通環境指標の可視化システムを構築した。

研究開発項目2 バックキャスティング指向サイバーフィジカルシステム
②バックキャスティング指向サイバーフォジカルシステム

研究環境の整備、各研究項目に対する基本設計を行った。

研究開発項目 2.1) バックキャスティング (慶應義塾大学理工学部)
  • マルチスケール社会シミュレーションにて動作するAIアーキテクチャを研究開発
  • 実空間でのインタラクションにおける人が受けるストレスを分析
  • 実空間でのインタラクションにおける適応合理的な人間モデルを構築

2.1.1
人の適応合理的行動選択モデルの創出については、公正社会仮設や、公正社会心理尺度、間接互恵、行動経済モデル、といった多様な適応合理的な人の行動様式を、エージェントの行動モデルに統合するための行動モデルの設計を行った。

2.1.2
マルチスケール社会シミュレーションの構築については、2.1.1 にて構築するエージェント集団が動作する社会シミュレータの設計を行う.その際、多様なスケールを統一的に扱うことができる仕組みの設計も行った。

2.1.3
2.1.1 での行動モデルを設計するためにも、ラボ実験にて、実際に人の行動をセンシングするための環境を整備する。具体的には、バイタル、顔表情、音声、デスクトップ利用ログを収集するシステムを構築した。

研究開発項目 2.2) サイバーフィジカルループ (京都大学)
  • リアルタイム動作のためのシミュレーション間漸進的連携
  • 人間行動等のセンシングデータに関する超解像度サイバーデータを生成
  • シミュレーション間を連携動作させた際の、超解像度サイバーデータとして創出するデータ種別を基本設計

「現在都市」でセンシングした超解像度データをもとにサイバーフィジカルシステム基盤上で、都市環境や自然現象、交通やインフラなどの社会活動、人間の行動や意思などの動的要素を生成する、フレームワークの研究開発をした。2022 年度は、都市環境や自然現象などの物理シミュレーション、交通やインフラなどの社会活動を再現する社会シミュレーション、人間の行動や意思に関わるセンシングデータからの超解像度サイバーデータの創出に取り組んだ。具体的には、降水データやそれに伴う水害被害のサイバーデータ、SNS のサイバーデータを生成する創出モデルを開発した。

研究開発項目3 現在都市の未来化
③現在都市の未来化
研究開発項目 3.1) 超解像度オーケストレイテッド・都市センシング (慶應義塾大学 SFC)
  • フレキシブルかつスケーラブルなセンサーフュージョンシナリオを考慮したセンシング基盤の基本設計を推進
  • 時空間拡張概念を取り込んだ最適データ配信基盤の基本設計を推進
  • 時空間拡張センサーフュージョンが可能な現在都市の未来化基盤基本アーキを設計

現実空間における時空間超解像度センシング基盤の構築を行うために、慶應大学 SFC で今まで取り組んで来た IoT センサーだけでなく、Deep Learning 画像分析やスマホユーザーからの入力をセンサーデータとして扱う参加型センシング、Web スクレ―ピングによりオープンデータもセンサーデータとするセンサライザー、さらには感情分析もセンシングデータとしながらあらゆるデータをセンサーデータとして扱う取組みのノウハウを最大限に活かし、ヘテロジニアスセンシングレイヤを更に進化させた。

研究開発項目 3.2) 行動変容のための情報生成・配信 (ゼンリンデータコム)
  • 超高速配信基盤の仕様検討、検証開発、性能要件の検討を実施
  • 超解像度3D都市空間データを効率的に作成するための手法検討、テスト開発を実施
  • 超低遅延ナビゲーションサービスの仕様検討、検証開発、性能要件の検討を実施

「超解像度オーケストレイテッドアクチュエーション基盤」の設計、構築本研究において実空間や仮想空間より収集されるデータや、3D 空間を構築する大容量地図データについてその特徴やボリュームについて整理を行った。次に、最終的にデータが利活用されるサービスやプラットフォームを見立て、配信基盤に求められるデータ構造や機能、性能の要件を定義し、超解像度オーケストレイテッドアクチュエーション基盤の設計、開発、構築を進めた。

研究開発項目4 ShonanFutureVerse の創造
④ShonanFutureVerseの創造
研究開発項目 4.1) 平時の実証 (NTT 東日本)
  • 協力自治体との連携により環境や交通分野における課題を抽出し整理
  • プロジェクトで使用できるアセットとデータのリストアップ
  • テーマ分野ごとにユースケースの枠組みを設定、ユースケースを検討
  • 都市における仮想空間、メタバースといったキーワードで都市の課題解決に取り組んでいる具体事例を調査

実証実験の準備として、自治体からのヒアリングをもとにしたユースケースの設定を行う。また類似モデルの調査を行い、本研究の新規性の分析を行った。

研究開発項目 4.2) 有事の実証 (NTT 東日本) (京都大学)
  • 既往災害の被害状況やエリアの調査および過去災害のデータを収集し、対象事例となる災害事例を選定
  • 超解像度サイバーデータを生成するために不足している観測データを収集するための機器を開発
  • 氾濫解析シミュレーションのデータ整備

シミュレーション実験、実証実験の準備として、過去災害のデータを収集するとともに、対象事例を選定した。
既往災害のデータをもとに、人間行動や行動変容が特に大きな被害軽減をもたらすと見込まれる事例を選定した。
また、災害現象について物理シミュレーションを稼働させ、超解像度サイバーデータから被害量を算出する手法を開発することで、実証実験に向けた準備を整えた。

2. 今後の研究開発計画

研究開発項目 1 未来都市の創造
研究開発項目 1.1) 仮想未来都市創造技術

2022 年度からの継続で、仮想未来都市を 3D 仮想空間として体験できる「FutureVerse」の研究において、実証実験連携先である横須賀市や藤沢市を題材として 3D 都市データに基づいたデジタルツインアプリケーションを構築する。また、本デジタルツインアプリケーションに対して、研究開発項目 1.3 で生成されるモビリティ関連データと、研究開発項目 3.2 で生成される 3D 都市データの統合も行う。
未来都市像抽出装置「キラキライザー」の研究に関連して、実証実験地域で利用可能な半透過型ヘッドマウントディスプレイを用いた Mixed Reality システムを開発し、研究開発項目 3.1 で生成が予定されている『キラバース』『ヤバース』の要素を可視化できる仕組みの構築を行う。

研究開発項目 1.2) 超解像度仮想未来都市データ解析

2022 年度に開発した町レベルのトラフィック予測モデルを拡張し、複数のイベント会場を含む都市レベルのトラフィック予測モデルを構築し性能を評価する。イベント会場につながる鉄道や道路などの経路の人流・交通流により、特にイベントの影響を大きく受ける区画を考慮することで現実的な計算時間で予測を実現する。

研究開発項目 1.3) 超解像度仮想未来都市データ生成

2022 年度からの継続で、湘南地域を対象に、交通環境デジタルツインの構築に必要な官民データを収集し、現状で利用可能なモビリティ関連データを継続的に取得する仕組みと、湘南地域における交通環境指標の可視化システムを構築する。また、初年度の取得データに加え、研究開発項目 3.1 でエッジセンシングされるモビリティ関連データをシミュレーションモデルに逐次入力し、空間・時間・意味空間的に拡大・補完された湘南域全体での交通流動データを生成する交通環境デジタルツインを開発する。

研究開発項目2 バックキャスティング指向サイバーフィジカルシステム
研究開発項目 2.1) バックキャスティング

2023 年度は、それぞれの実験環境の結合による連携動作、マルチスケール社会シミュレーションの基本動作検証を行う。

2.1.1
人の適応合理的行動選択モデルの創出については、公正社会仮設や、公正社会心理尺度、間接互恵、行動経済モデル、といった多様な適応合理的な人の行動様式を、エージェントの行動モデルに統合するための行動モデルの一次試作と検証を行う。

2.1.2
マルチスケール社会シミュレーションの構築については、2.1.1 にて構築するエージェント集団が動作する社会シミュレータの一次試作と検証を行う.その際、多様なスケールを統一的に扱うことができる仕組みの動作検証も行う。

2.1.3
2.1.1 での行動モデルを設計するためにも、ラボ実験にて、実際に人の行動をセンシングするための一次試作および検証を行う.具体的には、バイタル、顔表情、音声、デスクトップ利用ログを収集するシステムの連携動作の検証を行う。

研究開発項目2.2) サイバーフィジカルループ

超解像度サイバーデータを創出するフレームワークの研究開発に向けて、災害現象の物理シミュレーション、人流や人間行動などの社会シミュレーション、SNS を含むセンシングを利用して、シミュレータ同士の相互関係を鑑み、それぞれのデータ生成を行う。異種シミュレーションの相互関係については、京都大学がこれまで実施してきた、異種シミュレーション間の連携基盤を用いて創出する。過去に実際に発生した事例については、生成した物理シミュレーション、社会シミュレーション、センシングの超解像度サイバーデータを実際のデータと比較し定量的評価を行い、未来の事例については、超解像度サイバーデータの確度を定義し、妥当性の観点で評価を行う。
また、イテレーティブなフォアキャストサイクルによる未来像を創成し、出力結果の妥当性を検証する。イテレーティブなフォアキャストサイクルは上述の異種シミュレーション間の連携基盤を用いて実施する。ここでは、適用対象や文脈に応じて、センシングもしくは物理シミュレーションなどを基軸とし、他シミュレーションへ影響を伝播させることで再現する。

研究開発項目3 現在都市の未来化
研究開発項目 3.1) 超解像度オーケストレイテッド・都市センシング

超解像度オーケストレイテッド・都市センシングの研究開発項目 3.1 では、B5G ネットワークの超高速/超低遅延/超多接続な機能を最大限に活かして「現在都市」を超解像度でセンシングし、これらそれぞれのセンシングデータをフレキシブルかつスケーラブルに超ハイブリッドセンシングし、さらに本研究開発のバックキャスティング CPS によるオーケストレイテッド制御ポリシに基づいた「超解像度オーケストレイテッド都市センシング」を実現することを最終目標とする。
2023 年度は、現実空間における時空間超解像度センシング基盤の構築を目指す。具体的には、2022 年度に構築した②ヘテロジニアスセンシングレイヤのあらゆるデータをハイブリッドに活用するいわゆるセンサーフュージョン技術を高度に実現する③ハイパーアナリティックスレイヤに加えて、これらをユースケースごとに最適に組み合わせた超ハイブリッドセンシングシナリオ制御レイヤを構築することを目標とする。

研究開発項目3.2) 行動変容のための情報生成・配信

本研究において実空間や仮想空間より収集されるデータや、3D 空間を構築する大容量地図データについてその特徴やボリュームについて整理を行う。次に、最終的にデータが利活用されるサービスやプラットフォームを見立て、配信基盤に求められるデータ構造や機能、性能の要件を定義し、超解像度オーケストレイテッドアクチュエーション基盤の設計、開発、構築を進める。また、収集、蓄積、配信を進めていく中で、実際に取得されるデータと基盤要件のブラッシュアップを繰り返し、高解像度データを高速に配信する技術基盤を構築する。

研究開発項目4 ShonanFutureVerse の創造
研究開発項目4.1) 平時の実証

本研究開発の最終目的は、実証実験を実施する地域及びその地域の近くで住んでいる住民の生活の質を改善し、環境・経済・社会的にプラスの影響を生み出すことであり、それを実現するための基盤技術とは何かを追求することにある。人々の生活の質を改善するにあたって、研究開発初期の段階で地域及び住民の課題やニーズを分析・整理し、技術開発やフィールドトライアル要件の定義を行うための基礎情報として反映させていくが、そのために住民の意見を収集するためのイベントを実施する。1年目に引き続き、協力自治体とも議論し、地域課題に対する理解を深め、実証実験に役立てる。

研究開発項目4.2) 有事の実証

シミュレーション実験、実証実験の準備として、過去災害のデータを収集するとともに、対象事例を選定する。
また、災害現象について物理シミュレーションを稼働させる。選定した、いくつかの災害を対象に、(1)サイバーフィジカルシステム上でのシミュレーションによる効果検証を実施する。バックキャスト指向サイバーフィジカルシステムを用いて、超解像度サイバーデータを創出し、未来像創出を実施する。

関連

プロジェクトサイト

https://future-ver.se/

パートナー

  • 東日本電信電話株式会社(代表提案者)
  • 学校法人慶應義塾
  • 国立大学法人京都大学
  • 国立大学法人東京大学
  • 株式会社アイ・トランスポート・ラボ
  • 株式会社ゼンリンデータコム