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RICOH THETAの現状と未来(中編)

2014
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「RICOH THETAの現状と未来」と題した本シリーズの前編では、従来のパノラマ写真撮影手法との比較からRICOH THETAの本質的な価値を探るとともに、今後重要になるであろう開発者コミュニティ戦略ついて考察しました。

続く中編では、もう一歩踏み込んだ開発ロードマップを予測してみたいと思います。また、現在弊社ではRICOH THETAを活用した実験的なシステムを開発しており、こちらについては次回の後編でご紹介したいと思います。

ユーザーアンケートに隠されたヒント

販売開始から数ヶ月が経ち、恐らくリコーの関係者の方々も、これまでの販売状況やユーザーの反応などを見ながら、中長期的な開発ロードマップを検討されていることかと思います。もちろん、将来的な製品計画は企業秘密であり、一般ユーザーにとっては知るよしもありません。しかし、そのヒントを意外なところで見つけることができました。それは、「ユーザーアンケート」です。

このアンケートは、昨年12月下旬から1ヶ月ほどかけてRICOH THETA購入者を対象として実施されたもので、現在では既に終了しており、内容を見ることはできません。ウェブアンケートとしては、かなりのボリュームの設問数・選択肢から構成されており、私自身は回答に20分ほどかかってしまいました。

このアンケートを7割ほど進めた第30問目に次のような興味深い設問がありました。

RICOH THETAに今後以下の機能・要素が取り込まれたとしたら、それはあたなにとってどの程度魅力的ですか。

※クリックして画像を拡大表示できます

この設問に対する回答の選択肢は合計で18個も用意されており、いずれも具体的な「機能・要素」ばかりです。これらは「撮影機能」、「画像閲覧・加工機能」、「共有機能」、「その他」の4つに分類されており、最も注目すべき「撮影機能」カテゴリーでは、上位5つに以下の機能が挙げられています。

  • ・ 動画撮影(視聴者はダウンロードして視聴できる)
  • ・ ライブストリーミング撮影(視聴者はリアルタイムで視聴できる)
  • ・ 高解像度
  • ・ 音声付き撮影(静止画)
  • ・ 防水

上位に挙げられた機能ほど、リコー社として検討度が深い、もしくは実現性が高いことを意味するわけでは決してありませんが、少なくともリコー社自身が行ったアンケートであることから、RICOH THETAの今後の展開を予測する上では非常に参考になるヒントと言えます。

ニーズが高まる動画撮影、3つの対応パターン

最近では、360度全方位パノラマ動画がウェブメディアで取り上げられたりアプリとして配信されるなど、一般の方が目にする機会も徐々に増えてきているように感じます。こうした背景も踏まえると、動画撮影はカメラとして順当な進化の路線と言えるでしょう。事実、先月米国ラスベガスで開催された世界最大の家電イベントCES2014では、RICOH THETAのように極めて小型で、かつパノラマ動画撮影が可能なデバイスが幾つか出展されていました。

CES2014で出展されていたパノラマ動画撮影デバイス(写真:SLASHGEAR

RICOH THETAでは、本体両面にある2つの魚眼レンズから撮影された静止画を、ハードウェア内部で1枚のパノラマ写真に合成する処理を行っています。恐らく動画撮影でもこれと似たような合成処理が行われることになると思いますが、一般的には1枚の静止画よりも、1秒間に何十フレームもある動画を生成するほうが、必要とされる処理能力は高くなると考えられます。

そこで、仮にRICOH THETAに動画撮影機能が加わる場合、どのような実現パターンがあるのか3つほど考えてみました。

■パターン1:ファームウェアアップデートで実現

現行ハードウェアのまま、ファームウェアをアップデートすることで機能を追加するパターンです。ソフトウェア的なアプローチでハードウェアの性能をどこまで引き出すことができるのかが鍵になりそうですが、録画時間は最大で数十秒までといった何かしら制約が生じる可能性はありそうです。むしろ録画時間に制限を設けたほうが、Vine(最大6秒までのループ動画撮影アプリ)のようにコンテンツとして消費されやすい尺に収まるので、ソーシャルメディア上で話題になりやすいかもしれませんね。

■パターン2:PCとの組み合わせで実現

このパターンは、静止画のように撮影から合成までの処理をRICOH THETAの内部で完結させるのではなく、例えばRICOH THETAでは撮影のみを行い、その後撮影した素材をPCに取り込んでから合成処理を行うといったものです。動画撮影もそうですが、ライブストリーミング撮影は広い帯域幅も求められるので、有線LANに接続できるPCは必須になりそうです。

■パターン3:上位機種で実現

現行のRICOH THETAよりも高いハードウェアスペックを備えた上位機種で実現するパターンです。静止画の高解像度化や動画撮影機能などの点で現行機と差別化しつつ、ハイエンドな製品ラインナップを立ち上げるイメージですね。更にニッチなマーケットになってしまうかもしれませんが、ハイアマチュアの方やパノラマクリエイターの方にはウケそうです。

実は既に用意されているマイク

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、実はRICOH THETAには既にマイクが用意されています。本体上部にある穴がそうです。現時点では、マイクとして機能していませんが、こちらはファームウェアに録音機能を盛り込むことで、(ニーズがあれば)比較的早期に実現される可能性が高そうです。

縦長の溝の両端にある穴がマイク

SumsungのGalaxy S4に「サウンド&ショット」という名称で、写真を撮影しながら周囲の音を最大9秒間録音できるという機能がありましたが、これと似たようなイメージになりそうです。仮にこの機能が実現すれば、全方位パノラマ写真に音声が加わることで、さらに空間の再現をより臨場感をもって楽しめますね。

意外と面白いかもしれないエフェクト機能

個人的に興味を惹かれたのは、「エフェクト・アートフィルタ」の機能です。実は、以前に「もしパノラマ写真にInstagram風のフィルタを掛けてみたらどうなるんだろう?」と思い、実験してみたことがありました。
実際に作成したパノラマ写真はこちらからご覧頂けます。最初に表示されるパノラマ写真はオリジナルのもので、画面中央の矢印ボタンをクリックしていただくと、様々なテイストのフィルタに切り替わっていきます。

いずれも、同じカフェの同じ地点からのパノラマ写真ですが、フィルタを変えるだけで、かなり雰囲気が変わってきます。パノラマ写真は良くも悪くも「その場の空間をありのままに伝える」ことに向いた表現手法ですが、このようなアートフィルタを取り入れることで、ユーザーがちょっとしたクリエイティビティーを写真に付加して楽しめるのとともに、たとえ何気ない日常生活のいちシーンであっても、受け手側の印象もだいぶ変わってくると思います。

皆さんはどの機能や要素が一番気になりましたか?

今回はユーザーアンケートをヒントに、開発ロードマップについてあれこれ勝手に予測してみましたが、いずれにせよ今後の展開が楽しみであることには変わりはないですね。次回の後編では、弊社独自の取り組みについてご紹介します!

» RICOH THETAの現状と未来(前編)

» RICOH THETAの現状と未来(後編)

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